メキシコの貧困
(2018年11月)
メキシコは歴史が長く、多くの歴史建造物や遺跡が残されています。
気候も良く観光するにはとても素敵な国です。
しかし、メキシコの観光地以外の場所へ行くのは、個人的に微妙かと思います。
それはどこからが危険なエリアなのか分かりづらいのです。
立ち並ぶ景色や家は同じなのに、道路を挟んで向こう側から急激に治安が悪くなったりします。
急に空気が変わるのですが、そこに気づかず入っていけばお金を取られたり様々な犯罪に巻き込まれるでしょう。
上の写真はGoogle Mapで危険エリアでスラムと言われる場所を見てみたのですが、
特にゴミが多いわけでも、建物が簡易的であったりする訳でもなく、
私には危険な雰囲気は感じられません。ごく普通の街並みに見えます。
これでは、高級地以外ほぼ貧困地域と言っているようなものです。
私が教えていただいたメキシコシティにおける特に危険なエリアは、以下の通りでした。
モレロス(テピート)、メルセード、ゲレロ、モクテスマ、ペニョン・デ・ロス・バーニョス、バジェ・ゴメス、フベンティノ・ロサス、サン・フェリペ・デ・ヘスース、ドクトレス、ラモス・ミジャン、そして、イスタパラパとネツァワルコヨトルです。
全く聞いたことのない地名であり、スペイン語なのでピンと来ません。
地図に起こしてみたら、何となく掴めて来ました。
上の左の地図が広域版です。
オレンジがあまり立ち寄らないほうが良いエリアです。
空港の周辺や東側はほぼオレンジですね。
上の右の地図は中心部です。
緑は特に安全と思われるエリアです。
滞在していたのがソナローサですので、西側に行くにはほぼ安全です。
ソカロから少し外れると、ギャングのテリトリーになるので危険です。
観光地ソカロから北へ1km進んだだけで、テピートという2,500㎡ほどの巨大なマーケットエリアに出ます。
ここ最近は観光客が頻繁に強盗やスリに会うらしく、治安が良くないとの事で行くのは断念しました。
以前は露天1店舗ずつがマフィアへみかじめ料を払い、治安が保たれていたらしいのですが取り締まり強化の影響でマフィアの監視下ではなくなった結果、多くの強盗やスリが出入りするようになったらしいです。
ここはダウンタウン価格で、一般価格より様々なモノを安く手に入れることができます。
一般価格では生活が厳しいので、多くの人たちがここに買い物に来ます。
飲食店や雑貨店が仕入れに来る卸店もありますし、いわゆる盗品やコピー品なんかも売っています。銃や大麻、コカインも売っています。
夜になると高級車が売春婦を買いに来たりもします。
そして、私が今回案内していただいたのは、空港に隣接するモクテスマというスラムエリアです。
ここは案内してくれた方の暮らす街という事で入る事が出来ました。
ここも例外なく、どこからが危険なのかは分かりません。
このまま進んでいくと、何となく雰囲気が変わってきます。
地元の人たちが増えてきて、大麻をほぐしながら喋っている若者などもいます。
たまにこちらを見られますが地元の方のツレと思われているようで、あまり気にされません。
途中で以下の写真のような光景を目にします。
街中で電線に靴がぶら下がっているのを見た事がありますでしょうか?
日本でも一時期何かで話題になってたような記憶もあります。
これは、誰かの遊びでやってるのではありません。
マフィアの「ここはテリトリーだ」という印です。
ぶら下がっている靴はここで殺された人たちの靴です。
この下には20代後半くらいの若者が二人居て、案内してくれた方が話かけていたので
私も「Ora !」と挨拶し他のですが、ギロッと睨まれて終わりましたw
一人だったらお金を取られて引き返せと言われてそうです。
雰囲気だけで、彼らは本当に悪い奴らだなと分かります。
そして街中の数カ所には、家の敷地から道路へはみ出して祠のようなものがあります。
ここで誰かが撃たれて殺されたという場所には、記念碑のように祠が建てられています。
その家族が建てたのか、仲間が建てたのかは分かりませんが、とても大事に綺麗にされています。
数ブロックのエリアでしたが、誰かの敷地にお邪魔した感じでした。
「土足で上がり込んですいません」みたいな気持ちになります。
それだけ地域の方の連帯感が強いという事ですね。
案内していただいた方には、貴重な場所へお邪魔させていただいた事に感謝でございます
ここを抜けてまた幹線道路を渡れば安全になるのですから、本当にマフィアのシマといった感じです。
メキシコでは多くの方が、ジャーナリズム的な活動や撮影を嫌がります。
マフィアのテリトリーに暮らす方々は、下手なことは言えません。
どこかで撮影していたり、インタビューを受けていることが分かったら、密告の疑いをかけられ下手したら殺されます。
仮に新聞にどこかのマフィアのボスが逮捕されかねない情報に関与するスクープなんて掲載した日には、その新聞社の局長や編集長、記者の家族丸ごと逃亡する覚悟がないと出来ないくらいリスキーな事です。
よほどの伝手がない限りインタビューなどは難しいかなと思います。
ですので、正確でリアルタイムな情報や資料、動画、ツアーなどもない訳です。
メキシコシティ周辺では、小さなマフィアがひしめき合って抗争を行っているようです。
ここから離れると州単位で巨大なマフィアが存在し、政治から警察から経済までそこの実権を握っているようです。
今回スラムに行きましたが、実は「行ってきました」という実感は少ないです。
スラムと行っても、中にはマーケットやコンビニもあるので今まで見てきた貧困とはまた違うイメージです。
ここを案内してくれた方へ「子供達へノートやペンを購入してプレゼントしたら喜んでくれますか?」と質問しても、あまり喜ばれないでしょうということでした。
このエリアを歩いてみたり他の場所の話を聞いたり写真を見ても、確かに困っているという感じではありません。
メキシコシティには貧困がありますが、はっきり見えていません。
いわゆるニュースやドキュメンタリーで見る、服が極端にボロボロであるとか、靴を履いていない子供とか、トタンの家が建ってる環境を見る事は珍しいかも知れません。
たまにホームレスや本当に体が悪くてコップにお金を入れてくれるのを待ってる人を見かけますが、絶対的貧困が存在するアフリカや東南アジアほどの多さではありません。
それでは何が貧困なのでしょうか?
メキシコの賃金の安さと物価のバランスを見ても、生活が厳しい傾向にある事は事実です。
でも、私が感じた事と案内してくれた方の話を聞いた限りでは、生活が著しく苦しいとまでは無さそうです。
一時的に大変な時は、コミュニティで助け合いながら生活しています。
大学に進学できないとか、欲しいものが買えないとかもあるかも知れませんが、自分でアルバイトすることはできます。
メキシコは相対的貧困タイプの貧困なのでしょう。
とても簡単に言ってしまえば多くの国民が、平均収入以下ということです。
逆に言えば、中流階級〜富裕層が国の収入のほとんどを占めているということです。
勝手に比較して、ここから「貧困」と表現しているのは疑問に思います。
この相対的貧困という現象は、日本でも感じる部分があります。
例えば地方において、片親で時給1,000円前後で働き、子供一人か二人を養うとします。
家賃や生活費、学費や保険や年金を支払い、貯金できる額などほとんど残らないのではないでしょうか。
メディアなどに出てくる多くの家庭像は、塾や予備校に通わせ、お小遣いも渡し好きな習い事をさせ、それとは別に成人になったら使えるように子供のために貯金を積み立てる。
大学に進学させ、海外留学も経験し、大手企業へ就職させてあげるのが理想の家庭像として時代の常識のように出てきたりもします。確かに素敵な家庭像ですね。
ただ前者の片親は後者の裕福な家庭像と比較してしまい、時にはクリスマスや誕生日には何かプレゼントしてあげたい親の気持ちもあるでしょうが、そこまでしてあげられず「ごめんね」と子供に思いながら育てている親ってたくさんいますよね。
ただ必死に働き、子供に好きな道に進ませてあげられなくて、好きなものも買ってあげられなくて悪いなと思いながら乗り越えているのです。
本当は前者も後者も幸せな家庭なのだから、メディアや誰の情報にも左右されず、比較などせずに、自分の家庭や人生を自信持って楽しく生きたら良いと思うのです。
これは、日本における貧困の一つだと思います。
皆さんの思っている以上に、このような家庭はたくさん存在します。
皆さんの周りでこんな方がいたら、「あなたは素晴らしい親で、子供は何も気にしていないんだから、自信持って自分のペースで楽しく育てたら良いんだよ!」って声をかけて欲しいです。
その地域にコミュニティがない所は、あった方がいいですから作ったら良いと思います。
メキシコの方は強いですよ。
貧困なら貧困で、貧困層のマーケットを作って、自分たちのビジネスで自分たちの時間で生きてるんですから、Big Respectです。
余談ですが私は前者の片親の環境で育っており、私ができる事は心から協力したいと思っていますので何でもご相談ください。
育ててくれた親にはいつも感謝しています
体を壊してまで育ててくれた息子は、その優しさを継いで世界の多くの人を助ける存在になっていますよ。
